銀色のステイヤーとしをかくうま
恥ずかしいのであまり読んだ本の感想は書かないのだけど今回は特別。
河﨑秋子さんが競馬をテーマにした小説を執筆中と聞いたときは、正直不安だった。
競馬社会って専門的すぎるし、ちょっとした違和感にファンはうるさいし、すごく難しい部類だと思っている。
好きな河﨑さんが競馬ファンから嫌われちゃったらどうしよう……なんて失礼な想像をして、読むのが怖かった。
結論、「銀色のステイヤー」すごく面白かった!!競馬やサラブレッドの本質を描いた表現にうなりっぱなし。競馬が文字になっている!
さらりと物語は進みつつ、できごとの一つ一つにわくわくする。ノンフィクションを読んでいるようで無意識に「ふ~ん」と声が出た…
島田明宏さんが特にそうなんだけど、河﨑さんも行間から自然と競馬愛がにじみ出る。
競馬にはたくさんの人がかかわっている。結局は人だなぁ…と思う。生き物に関わる人間への洞察力のすごさは随一なわけで、さすが、死と向き合っている人だ、と思う。
また、細かな取材からしか表現できない丁寧な描写があって、競馬ファンは安心感を得る。たとえば厩務員が発走につけばバスに乗るまでレースは見られないとか、小さなモニターで見るとか。過去に厩務員の描写でそこまで書いたものがあったかな、と考える。
私は結構競馬社会のことは知っているほうだと思うけど、知らないこともあった。
歴史が出てくるところはさすがだし、たまに独特の、これまで誰も使わなかった表現にはっとさせられる。
私がどう表現しようかとずっと言葉にしあぐねていることをわかりやすく表現していて、勉強になる。
164ページ~は、私の友人(になりうるタイプの人)はスカッとするでしょう。鉄子のキャラもいいね~
いい競馬小説は続編を読みたくなる。人馬が今後どのようなレースをするのか想像して読後感に浸る。
でもそれは普段の競馬こそがストーリーの寄せ集めで、ずっと見続けられることを幸せに思う。
目の前にあるたくさんの競馬小説に触れられる贅沢がある。
中長距離好きとしては、ステイヤーに注目したのはうれしい。
仔馬の頃から白っぽい芦毛、ニットウライジンみたい。
その前に読んでいたのが「しをかくうま」(九段理江)。
馬はそんなに出てこない話だと思いながら読んだら、出てくる出てくる、というか競馬ファンはもう一つの楽しみ方ができる
独特の文体から感じる疾走感が楽しい。
2冊とも競馬ファンに読んでほしい。
(実は銀色のステイヤーで10字やん、って馬がいて汗
しをかくうまの世界かと笑 文庫で直るだろうか…)